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DT50総点検

ただいま58050キロ
 2002年1月20日日曜日、DT50はもう60000キロに達しようとしている。今年は徳島でも活躍してもらう為に1日がかりで総点検を行った。今回はエンジン周りを中心としたかなり手間がかかる工程である。今回はシャーシフレームからエンジンを下ろすという大胆かつ気合のいることを実施した。実はエンジンを下ろすのは今回が初めてなのだ。明日は学校があるからどうしても今日中に終わらせなければ。もし元に戻らなくなったら明日はどうやって学校に行こうか…などと不安が脳裏にかすめる中何故か手はもう既に工具を持ちボルトを緩め始めている(笑)。機械屋はやっぱこういうことが好きなんだ。
 今回手入れが必要と思われる部分は
 その1 チャンバーガスケットの交換 (排気ポートから燃焼後のオイルが漏れ出している)
 その2 シリンダーヘッドガスケットの交換 (ボアアップから25000キロになりシーリングしたボンドが限界かな)
 その3 ギヤオイルの交換 (ドレンボルトをナメたのでもう排出不可能。そこで入り口から抜く。)
ぐらいかな。
 
 これがDT50の心臓部である2ST内燃機関である。こんな小さなパワーユニットからノーマルでも7.2PSものハイパワーをひねり出す。これはモンキーやカブの4STエンジンの2倍の出力である。排ガス規制で2ST機関は幻になりつつある。これから先、原付50ccでの7.2PSは伝説になるかもしれないね。
  
 フレームからエンジンを下ろすにはエンジンにつながっているコードやオイルパイプそしてDT50は水冷であるから冷却水パイプなども外さなくてはならない。タンク類の外装も取り外す。今回は興味本意にエンジンを下ろしたけれど無理にエンジンを下ろさなくてもシリンダ脱着やクラッチ板交換の作業は行えるよ。

工程1 冷却水を抜く。とりあえずポンプに付いてあるドレンコックから開ける。この時内部は気圧に保たれているのでそのままでは抜けないから入れ口を開けてやると勢い良く出てくる。

工程2 クラッチ板の点検もするならキックアームも退けておこう。

工程3 キャブとオイルタンクとオイルポンプをつなぐパイプを外す。これはオイルポンプを取り外さないとやりにくいかな。またタコメータワイヤを外す。これはワイヤー交換を参考のこと。

工程4 チャンバーをシリンダから外す。

工程5 キャブ類をシリンダから外し、クラッチワイヤも退ける。またオルタネータから出ている線をたどって行くとタンク下にコネクタがあるので外す。

最後に図中の緑矢印で示してあるボルトを外す。するとトップ図のようにエンジンを下ろすことができる。重量は15キロぐらいある。
 
 シリンダを開けると水漏れを防止するためコーキングしたボンドとガスケットが焼き付いていた。ガスケットは破壊しないと取り外せなかった。基本的にガスケットは1回限りの使い捨てが基本だ。根気良くこびり付いたガスケットを削るように取り除く。マイナスドライバーを使用したが面を傷つけないように細心の注意が必要。

シリンダー部
コーキングする理由
 シリンダはキタコ製の60ccのボアアップキットであり、取り説によると歪み取りは平らな板に320番の紙やすりを敷いて研磨すると書かれているが相当うまくやらないと水漏れが起こってしまう。紙やすりでフライス盤のような精度を出すなんて到底無理な話である。そんなわけで失敗した私は水漏れを防ぐ為にゴム状に固まる特殊な接着剤を使用した。この接着剤はセメダインのSUPER Xというもので使用温度範囲は-45℃〜120℃までで60ccぐらいの水冷エンジンの外周ぐらいならば十分耐えられる。ホームセンタで350円ぐらいである。下の図にその接着剤が写っているよ。

 ボンドは1の部分一周に塗る。2の所は冷却水が流れるので1は最高100℃ぐらいであるが超高回転域で回し続けると内圧が上がり熱力学上100℃を超えることがあるが冷却効率が良いのか前回全く問題は起こっていない。ちなみに4はピストンが上下運動をする高温高圧になる所であり最高1500℃ぐらいになる。よって3の部分は水が接触するといっても1よりは高温になるのでもっと高温に耐えられるボンドが必要であり今回のボンドを塗ってはならない。幸い内側に水漏れは起こっていない。各部の温度分布を詳しく知りたい場合は伝熱学を勉強しよう。

 コーキングするボンドは他にもシリコンのコーキング材などが使用できる。これは200度まで耐えられ、絞り出しにコーキングガンが必要だ。

コーキングするにはセメダインのSUPER Xやシリコンがおすすめ。
 
 シリンダーを取り外すとピストン全体が見える。コネクティングロッドでクランクとリンクしている。ピストンをロッドから外す時ピンを抜くがクランク内に落ち込んだら大変だ。必ずウエスなどでカバーして行うこと。またピストンには方向があるので取りつけ時には要注意。
 接着剤をシリンダの外側のランドに塗る。同じようにヘッドやガスケットにも行う。

後は組上げるだけであるが接着剤が乾くのに1日かかるので冷却水を入れるのはその後にしよう。エンジンがかかるかどうか軽くテストするのはよいが10秒ぐらいで止めること。エンジンが焼きつくかもしれないぞ。
 
 今までの手順でガスケット類を交換した。基本的にボアアップカスタムはこのように行うのだが前に述べたようにエンジンを車体から下ろす必要はない。2STのボアアップ作業は4STと比較にならない程簡単であり誰にでも普通の工具で行える。DT50のボアアップキットは上のようなものでキタコから発売中でシリンダー、ピストン、ガスケットのフルセットで55000円だ。モンキーなどの4STや空冷の2STよりはかなり高価であるが水冷シリンダーは精工かつ複雑なため仕方ないところなんだ。ピストンやガスケットは単品販売も行っていてピストンセットが5500円、ガスケットセットは1500円だ。今回はガスケット類の交換ということでガスケットセットを購入。これにはエンジン周りのガスケットがセットになっていてチャンバーガスケットも付いている。ヘッドガスケット以外はノーマル50ccシリンダーにも使用できるぞ。
 ギヤオイルの交換はエンジンを逆さまにして入り口から排出した。他にゴムホースで吸い出す方法もあるがドレンをつぶすと作業が大変である。幸いギヤオイルなので余裕で20000キロは大丈夫なんだけどね。

 今回はクラッチ盤の点検は忙しくてできなかったし、これはエンジンを下ろさない方がやりやすい。さすがに60000キロになると交換する必要があるだろうな。

 またピストンリングも限界にきている。これは下の写真のようにリングより下に茶色い焼けがきている場合燃焼ガスが吹き抜けている可能性が高い。次回は交換だ。扱い方にもよるが2STピストンリングは公道走行なら大体15000キロ〜20000キロで交換するものであるのでボアアップして30000キロになろうとしているこのエンジンはもうとっくに交換時期を過ぎているのだ。

 ピストンリングがへたってくると上のような症状の他、エンジンから「カンカン」と金属をたたくような音がしたり低速トルクがなくなり逆に高回転がよくなったりする。
使用したギヤオイル
 ギヤオイルは基本的に4ST用オイルと成分がほとんど同じであるので代用できる。4STオイルの方がハイグレイドな成分であることが多いしね。今回使用したのはヤマハの最新のオイルであるエフェロ SF (SAE10W-30 SFClass)である。初めて使用するので性能はどうかはまだ分からない。

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