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DT125R ピストンリングの交換
2003年年末総点検

2003年12月8日 21440km
 DT125Rは21140kmになり、そろそろピストンリングの交換が必要である。2STの場合、ピストンリングは10000km〜15000kmで交換するのがステータスのようである。レーサーモデルの場合は、レース毎に交換することもあるという。レーサー界ではかなりシビアである。乗り方にもよるが、20000kmオーバーの現在、交換時期はとっくに過ぎていることになる。このまま放っておくと、カーボンの堆積が進み、リングが固着してしまいシリンダー内のポートや壁面を傷つけて、最悪焼きついてしまう。また、リングが磨耗してくると、低速トルクが不足したり、ピストンがシリンダーに接触して、金属を叩くような打音が出るようになる。2STのエンジンは長持ちしないと言われるのは、シリンダー内壁面に掃気ポート・吸気ポート・排気ポートの穴が開けられており、ピストンリングの交換を怠るとポートを傷めたり、4STのように常に潤滑されているわけではないからである。ノーメンテだと4STの寿命よりもはるかに短くなる。でもちゃーんとメンテしていれば、4ST並に10万km〜走ることもできるはずである。

 ピストンリングを交換するには、エンジンを開けなければならないので、あまりいじり慣れしていない人は、尻込みしてしまうものである。しかし2STのエンジンは、4STのようにカムやヘッドバルブがないので、初めてでも比較的手を入れやすい。やってみればシンプルすぎて、思ったよりもあっけなく感じるはずである。むしろ核心であるピストンリング交換よりも、エンジン周辺のパーツを外すのに時間がかかる。2STオフロードバイクの場合、ほとんどが水冷になっているのだが、エンジンを開ける前にクーラントを抜くことから始めなければならない。車種によっては、シュラウドなどの外装を外さなくてはならない場合もあるだろう。そんな理由でエンジンを開けるまでの作業が大変だ。
◎交換するパーツ
 ピストンリングだけの交換予定だったが、ショップの方に2STなら、ピストンやピストンピンも同時に換えた方がいいといわれたので、それらも交換することになった。作業はいずれも同じくらい時間がかかるし、エンジンを開ける毎ごとに周辺のガスケットも交換が必要になるので、一度の機会に考えられる消耗パーツは全て交換した方がお得である。

◎道具
 必要な道具は、各種スパナとメガネレンチ・ラジオペンチ・プラスドライバー・ハンマー・焼きミスなどでいらなくなったCD-R・トルクレンチなどである。トルクレンチは所有していなかったので、自分は感覚で締めることにした(多分大丈夫)。CD-Rはこびりついたガスケットを剥がす時に重宝する。

◎交換パーツ

今回は2機分を注文したので、全部で20000円(外税)
↑89年式のDT125Rに乗っている友人用にも購入したので、全部で20000円かかった。一台なら10000円かかることになるが、別途にエキゾーストガスケットが必要。89年式〜最終型までピストン周りは同じ。ピストンが合計価格のウエイトを占める。

パーツリスト
◎ピストン------------------2YK-11631-04-35
◎ピストンリング-------------3XC-11610-00
◎ピストンピン--------------137-11633-10
◎サークリップ--------------93450-17129
◎シリンダーガスケット-------4FU-11351-00
◎シリンダーヘッドガスケット---3BN-11181-02
◎サーモスタットガスケット-----3BN-12414-10
◎O-リング(YPVS)×2個------93210-30734
◎O-リング(サーモスタット)----93210-27778
合計10000円(外税)
それとエキゾーストガスケットが必要(自分はキタコ製が手元にあったのでそれを使用)
他に新しいクーラントや、パーツ洗浄用の灯油やガソリンも必要。必要に応じて556などのケミカル品も用意しておこう。
※注意:89年式(タコメータが付いていない初期型)のDT125Rには使用できない。
◎作業開始
 
作業前に新品のピストンにリングをセットしてしまおう
↑DTの場合、ピストンリングはエキスパンダー・トップリング・セカンドリングの3つからなる。ちなみにこれら3つセットでの販売になっている。エキスパンダーはセカンドリングの張力を増して、より気密性をアップさせる働きと、潤滑オイルを保持させる役目がある。トップリングは膨張の爆圧を受けたとき、テーパーがかかった面がそれを受け止めて、スラスト力が働いて、シリンダー面との気密性を高める働きがある。よってトップリングはテーパーがかかった面が上向きとなるので、装着時に注意が必要。
 DT125Rの場合2つのリングになっているが、ボアアップキットなどレース向けのピストンはトップリングのみの場合もある。摩擦が減る分回すのには有利であるが、耐久性はぐっと下がる。DT50のボアアップキットはトップリングのみだった。

 次にタンクやシートなど邪魔になる外装は取り外す。その前でも後でもかまわないが、クーラントを抜く。ウォーターポンプの所にドレンが付いている。また水路が負圧になるので、ラジエターのキャップを外さないと、きちんとクーラントが抜けきらないので注意する。車体を横に振ることも必要。
 ラジエターキャップは、ラバーパッキンに水垢が付着するので、この機会にきれいにしておこう。

クーラントを抜く
↑クーラントはえらいどす黒い色をしているが、もともとがこんな色。購入してから一度も換えていなかったので、今回始めて交換することになる。今回はそんな意味では総点検になるかな。

◎クーラントが抜けきったら、ウォーターホース・プラグ・YPVSのワイヤーなどを外す。
 
YPVSのワイヤを取り外す                      これがYPVSの中身だ
↑YPVSのワイヤーを外すには、ケースを開けるためのヘキサゴンレンチも必要になる。ついでにほつれがないかも調べておく。YPVSの仕組みが気になったので、機構部を開けてみた。サーボモータと制御用の回路からなる。回路は専用のCPUが搭載されていた。


↑2STオイルタンクも邪魔になるので、適当なところにぶら下げておこう。

さあいよいよシリンダーを外してみよう
 
シリンダーとクランクケースを固定しているボルトを外せば、シリンダーを取り外せる
↑DT125Rの場合、エンジンを下ろさなくてもシリンダーの脱着が行える。また、シリンダーヘッドとクランクケースを止めるナットが独立しているので、ヘッドを着けたまま取り外すことができる。よって、ヘッドを開けない場合は、ヘッドガスケットを交換しなくても済む。今回は交換パーツも全て用意しているので、横着せずに一連の作業を通してみる。
 ヘッドを着けたまま外す場合は、サーモスタットのケース(ウォーターホースを付ける所)がフレームと干渉してしまうので、予め外しておこう。シリンダーを外した状態で、ヘッドのナットを緩めるのは難しいので、ヘッドも開けることが前提であれば、サーモスタット→サーモスイッチ→ヘッド→シリンダーの順に外すといい。

 
ウエスをコンロッド周辺に詰める
↑シリンダーを外したら、古いシリンダガスケットを取り除いて、クランクケースにウエスを詰め込んでおく。これはピストンを外す際にサークリップを誤ってクランクケース内に落としてしまう恐れがあるからである。落としてしまったら、エンジンを下ろしてクランクケースを割ることになる。半日の作業どころでは済まなくなるぞ。

◎問題のピストンを外す

外したピストン(左)と新品のピストン
↑ピストンリングのみの交換の場合は、コンロッドから外すことなく交換できる。今回はピストンも交換するため、コンロッドから取り外す。この時サークリップの一方をラジペンで取り除き、逆から押してピストンピンを抜く。今回ピストンピンが非常にかたく、押したくらいでは抜けなかった。サービスマニユアルによれば、ピストンピンを抜く時、たたいてコンロッドに横方向の力を強くかけてはならないことが書かれているのだが、ちょっと無理な話である。ピンに合うようなパイプを当てて、軽くハンマーで叩いていくと外すことができた。
 新品のピストンには軽くピンを入れることができたが、外したピストンにピンを入れようとしても、叩かなければ入れることができないくらいである。嵌め合いは「中間ばめ」くらいになっているが、外した方はどう見ても「しまりばめ」になっている。恐らくピストンの上下運動で、穴が変形してしまったと思われる。やっぱりピストンも交換するのが正解だった。つまり今後は乗り方にもよるだろうが、20000kmでピストンとリングとのセットで交換するべきかな。


燃焼室は特に傷もなかった
↑シリンダの燃焼室は、傷などは見受けられなかった。内面に掃気ポートが見られる。非常に間隔が狭い部分があり、ピストンリングがへたってくると、ダメージがそこに集中してしまう。早めのリング交換を心がけたいところかな。
 シリンダ自体はアルミ製で、以前のDT50のシリンダよりも軽く感じた。DT50は鋳鉄で出来ており、非常に重く錆びやすかった。非常に高価なパーツなので、慎重に扱おう。


シリンダ周辺パーツはこれだけ
↑エンジン腰上はこれだけからなる。非常にシンプルである。勇気とやる気があれば誰にでもできるはず。これくらいならサービスマニュアルは必要ない。


◎本当に大変なのがコレ

CDRが意外に使える
↑シリンダーヘッドとシリンダートップ面にこびり付いたガスケットのカスを取り除くのが非常に大変。ここでカッターナイフやマイナスドライバーなどを使いたくなるが、アルミでできた表面はすぐに傷ついてしまい、水漏れなどのトラブルが起こるおそれもある。
 ここは時間をかけて適切に処理したいところである。プラスチックのヘラを使っても良いし、自分の場合いらなくなったCDRを用いたが、これが意外と使える。基本的にアルミよりも柔らかいモノならOK。あらかじめガソリンなどで面を磨いて、爪で取れるのは取り除いておくのがベター。


バルブのOリングも交換しておこう
↑バルブもきれいに洗浄しておこう。カーボンが固まっている場合は、丹念に落とす。ガソリンに漬けておけばある程度きれいになる。またOリングは2個所付いており、もともとはオレンジ色だったのだが、今回購入したのは何故か黒色になっている。耐熱などは大丈夫なのだろうか。大丈夫だと考えて組み付けた。グリースを付けておく。

 
シリンダガスケット           2STオイルを塗っておく
↑シリンダガスケットは、もともと付いていた物は黒色の方で、表面がラバーコーティングされているような感じであるが、今回購入したものは表面が紙になっている。耐久性は大丈夫なのだろうか。心配なのは水漏れが起こらないかということなのだが。形状も同じなので間違ったものが届いたとは考えにくいのだが。
 シリンダー内壁面に、2STオイルをたっぷり塗っておく。これを怠ると焼きつくので必ず行う。


ピストンにも2STオイルを塗っておく
 ↑シリンダと同じように、ピストン側もオイルを塗っておこう。リングの周辺とピンの周りも忘れずに行う。


慎重にシリンダをセットする
↑本来ピストンを上死点まで上げておくと作業がやりやすいが、フレームと干渉して取り付けができないので、DT125Rの場合は下死点まで下げて作業する。セットする前に、ピストンリングがきちんと位置が合っているかをもう一度確認しておこう。

後は逆に組み立ていくのみである。

◎忘れずクーラントを入れよう

汎用のクーラント
↑忘れがちなのが、くみ上げてクーラントを入れ忘れることである。このままエンジンを始動すればオーバーヒートですぐに焼きついてしまう。自分は汎用のクーラントを使用した。ホームセンターで普通に売られている車用のもので、これはそのまま注ぐだけでOKだ。さび止めも入っているので安心。


◎ギヤオイル交換もついでに行った。

ついでにギヤオイル交換
↑ギヤオイル交換はメーカー指定だと、20000kmに1回か年に1度の交換となっている。2002年09月16日に16500kmで交換したので、走行距離は5000kmくらいだが、1年前なので今回交換することにした。オイルは純正のギヤオイルで、以前のものと缶の柄が変わっていた。
 ほとんど元のオイルのままの色で、まだ交換するのは早かったかな。


◎カーボンの堆積具合を点検

ついでにマフラー・チャンバーのポートも点検
↑2STの場合すぐに、カーボンでサイレンサーの穴が詰まってくる。今回ついでに点検してみたのだが、見てびっくり。壁面にカーボンが堆積していた。奥の方はカーブしていて無理だが、可能な範囲はドライバーなどで掻き出しておいた。チャンバー方も同じくらいたまっていた。

まとめ
 ピストンやリングを交換してエンジンをかけてみた。ならしがある程度必要なので、アイドリング運転を数分続けた。交換後エンジン音が違うことに驚いた。新車のあの音である。安定したら走行してみた。換えたばかりなのであまり無理はできないので、6000rpmくらいまでに抑えた。向かい風にもかかわらず軽く90km/hは出た。明らかに効果が出ているが、今日は無理をせずこの辺で終了。つーか写真を撮りながらの作業で余計に疲れた。


2003年12月27日
 fulleren氏の89年型のDT125Rもオーバーホールを行った。バイクいじりは全くの初心者だが、高専を出ているので任せてみた。


89年式のDT125R 外装から外していこう
 作業手順は同じだ。

  
今日はシリンダとピストンを外すまでにしておこう
 作業を始めたのが夕方でもう23時になろうとしている。何せ10年分の垢が溜まり、掃除にも手間がかかるのだ。水路はコレステロールとでも言うべきか、水垢の堆積が酷すぎる。増して初めてのエンジンメンテで、さすがに手間取っている様子。ピストンを外したら後は明日にしようということで本日はここまで。

次の日
 もっさんも駆け付け、以前からシリンダーヘッドからオイルが漏れていたので、家でパッキンを換えることにした。CBX125FのエンジンはDOHCで、造りが凄い。125ccとは思えないなあ。ヘッドを開けてびっくり!まるでアナログの時計のように精密で複雑な構造をしている。こりゃーサービスマニュアルがないと分解は厳しいなあ。まあ今回はヘッドガスケットの交換なので大丈夫だ。
 fulleren氏は奥で、シリンダーにこびりついたガスケットを除去している。
 
もっさんも駆けつけ、自分のバイクを修理
 もう車庫はバイクで過飽和状態。

 
 ようやくピストンを交換し、シリンダーを組み立てた。最後に来てクーラントを注ぐと、ジャバジャバ漏れている。おい!ヤバイぞと思って調べたら、ガスケットの形状が異なっているではないか!89年式はサーモスタットガスケットが若干異なるようである。
 さあどうする。シリコンでコーキングするか?いやいやブチルゴムでガスケットを自作するか・・・などと思案したことろ、ガスケットを自作することとなった。化学屋の氏が言うには、材質が問題だという。ブチルゴムだと振動や温度などはもちろんのこと、薬品の耐久性が気になる。常にクーラントや水と接触することになるので、通常の天然ゴムであるとすぐに朽ちてくると氏はいう。ベストなのはシリコンだが、シリコンでできたゴムシートなんか売っているのか?で、氏が思いついたのが、下の写真のホットボンドスティックパレットという製品。

↑これはホットボンドスティックパレットという、グルーガンで熱したグルーを使って、アクセサリを作るような時に使用するパレットである。価格はホームセンタで498円だった。結構高い。

 これをガスケットの形状に切ってしまおうというのだ。加工したものを上に載せている。これだとバッチリ水漏れが収まった。さすが化学屋。こんなのよく知ってたなあ。自分は初めて見た。かなりパッケージの色が変色していたので、相当マイナーな製品と見た。

 クーラントを再び注ぎ、水漏れがないことを確認した。バッチシだった。あとは慣らしでエンジンをかけるのだが、何度キックしてもかかる気配はない。仕方なく押しがけを試みる。これでもかからない。10回くらい施行してエンジンがかかったと思えば、スロットルを開けていないのにもかかわらず、超高回転でエンジンが回る。マフラーから火花を吹いた。アフターファイヤーである。これはおかしい。即座にエンジンを停止し、氏にキャブを付けた時何か忘れなかったか聞いてみたが、心当たりないという。
 スロットルバルブを入れる時、きちんと合わせて入れたか?と尋ねると「適当に入れた」と抜かす。ばかたれぃ!
調べたら案の定、フル開放状態でスロットルバルブが上がっていた。そらエンジンなんかかからんわなあ(爆)。氏はここで、スロットルバルブにもちゃんと入れる向きがあることを学習したのだった。
 で、キックしてみると一発始動。もっさんも爆笑。あまりにもあっけない一瞬だったわけだ。


 まあいろいろあったけれど、自分の力で自分のバイクや車を直す喜び味わえたことだろう。氏はDTに一層愛着がわいたことだろう。

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