消え行く2サイクルエンジン

21世紀、果して2STは生き残れるのか?
 2サイクルエンジン(2ST)は軽量化・小型化・高出力を同時に得ることが出来る上、非常にシンプルな構成のためメンテも容易に行えオフロードバイクには最適の内燃機関である。2サイクルエンジンは125ccクラスならば4サイクルエンジン(4ST)250ccクラスにも匹敵するパワーを引き出す事も可能であり125ccのDT125は以前乗っていた250ccのXR250BAJAと加速感や最高速もほとんど変わらない。つまり2STは4ST一クラス上の性能が得られる(全てにおいてそうだとは云い切れない部分もあるが)。

 特に50ccの原付には欠かす事ができない存在だろう。ちなみに50cc原付クラス(公道一般専用車)で今まで見た中ではアプリリアのRX50の8.8PSが最高だった。国産車は7.2PSがメーカーの自主規制となっている。それでもこれだけのパワーを4STで得るには80cc〜100ccの排気量は必要だ。ホンダ最新作である4STのAPE100でも100ccながら7PSとなっており、いかに2STが凄いかが分る。

 2STはシリンダーそのものがエンジンといってもよいほどシリンダーの構造によって性能が変わる。設計も理論はあるものの実際は理論どおり設計すると性能が悪かったり、逆に適当に設計された方が性能が良かったという事例もあり経験・勘・試行錯誤がものをいうことが多いらしい。私も高専時代に2サイクルエンジンの設計をしたことがあったが120ccのくせに6PSしか出ない結果に。設計自体非常にシビアなものだと感じた。このエンジンは理論だけで設計を行うととんでもないことになる。

 ここで動作原理を説明すると
■レシプロ4サイクルエンジン (4サイクルエンジン)は、シリンダー内で吸入、圧縮、爆発、排気の4スト ローク(行程)で1サイクルが完了する。この間にクランクシャフトは2回 転(ピストンが2往復)する。つまり、2回転で1爆発をするのが4サイク ルです。  
●吸入行程    吸入バルブが開き、ピストンが降下するに従って、混合気が吸入さ れる。そしてピストンが下方に降下するにつれ、吸入バルブが閉じる 。(混合気は、キャブレターという装置で空気と燃料を霧化して一定 の濃度の混合気が作られます。)  
●圧縮行程    バルブが閉じた状態でピストンが上昇し、内部の混合気が圧縮される。  
●爆発行程    ピストンが最も上の位置まで上ったところでスパークプラグに高圧 電流が流れて発火し、高圧縮の混合気が爆発してピストンを大きな力 で押し下げ、クランクシャフトに伝わる。この力がエンジンを回す力 になる。  
●排気行程    押し下げられたピストンが上昇に転じ、排気バルブが開く。そして 燃焼したガスが排出されピストンが最上あたりにくると排気バルブが 閉じて次のサイクルへと移る。

本題の2STエンジンは
■レシプロ2サイクルエンジン  現在ではバイク専用ともいえるエンジンです。1回転1爆発でバルブをも たないシンプルな構造。軽量でコンパクトなおかつハイパワーなので、バイ クには最適な性格をもっている。シリンダー内壁面に掃気孔・排気口・吸気孔が設けられているのが大きな特徴。
●吸入・圧縮行程    バルブを持たず、シリンダー壁に設けられたポートから、吸排気を 行う。ピストンの上昇によって混合気を吸入ポートから取り入れる。 それと同時に、前に吸入されていた混合気が圧縮される。  
●爆発行程    スパークプラグが発火して、爆発することでピストンが下降し、ク ランクシャフトに動力が伝達される。  
●掃気行程    ピストンがさらに下降すると排気ポートが開いて、燃焼済みガスが 排出される。その瞬間に掃気ポートも開いて、ガスが交換される形に なる。 つまり、各ポートの位置や大きさでエンジンの性質や特性が大きく関わ ってくるのが2サイクルの特徴。

 そんな2STであるが、1998年10月1日から行われた未規制車(2輪車)への排ガス規制が施行され2STは勿論、4STまで大きな影響を及ぼしたのだ。排ガス規制の内容は複雑なためここでは紹介しないが、現行モデル(1998年時点)の継続生産はこの排ガス規制に合格したものでないと市場に出すことが出来ないというもので、メーカーは4STなら簡単なキャブ調整や触媒で解決できると言うが、2STは特に炭化水素の排出量が4STの2倍近く出るためかなり厳しいという。オフ車の現行モデルが実際対象となるのは1999年9月からで殆どのモデルが対象。1999年9月までで、モデルチェンジしたばかりのモデルや新製品は2000年9月からになる。DT125R・KSRUなんかの新車は未だに見かける(2002年)。これは規制対象が2000年9月と施行されてから1年猶予があったためだ。下に国産主オフ車の規制車種を揚げてみる。
緑色は2002年現時点で規制クリアしたもの
施行年月日 ホンダ ヤマハ カワサキ スズキ
1999年9月 CRM250AR・XR250バハ・ディグリー・SL230・CRM50 TT250Rレイド・セロー225WETW200・ランツァ・DT50 KLE250アネーロ・スーパーシェルパKLX250・Dトラッカー・KDX220SR・KSRT RMX250S・DR250R・ジェベル250・ジェベル200・DF200E・TS200R・ハスラー50
2000年9月 アフリカツイン・XLR125R・CRM80 DT125R KLE400・KDX125SR・KSRU ジェベル125・DF125E・TS125R
 表を見て分るが国産オフ車のモデル数は一気に減少した。2STは全滅という悲しい状況。特に125cc以下はオフ車が存在しない?というとんでもないことに。確かに2002年になってホンダがAPE100を出したが完全なオフとはいえない。50cc原付クラスは皆無。中古で探すしか方法がない。というかオフ車は当時98年ころ(丁度私が乗り出した頃)人気が下がっていて中古自体玉数が少ないので値段の高騰はもはや避けられないだろう。特に125ccクラスは維持費自体50cc原付と然程変わらないため、買う人は乗り潰すつもりで買うことが多いため中古そのものが少ない。またその維持費の安さからか、乗らなくなっても売却されることが少なく家の納屋に埃を被って眠ってたという話が多い。中古オフ車の125ccがあったならすぐに確認するくらいの覚悟は必要だ。

 意外と多い中古オフ車は、ヤマハのセローが圧倒。2STならDT125がそこそこ。カワサキのKSRUはかなりある。2002年現在今揚げた2つの2STマシンは何とか新車のストックがあるショップも存在する。

 ホンダのCRM250ARはもう値段の高騰化が始まっており、中古でも新車価格と変わらなくなってきている。

 中古で2STマシン(絶版車)を買ったあとのアフターだが、ホンダなら保有期間が長いので問題は無いだろう。ヤマハも恐らく大丈夫かと思われる。特にDTシリーズは海外ではいまだ発売中だからね。スズキとカワサキに関しては手元にデータがないため分らない。いずれにせよ、他の車種のパーツを流用できることが多いので心配はないと思う。

 2STマシンは2STオイルがいつまで販売されるかということが気にかかる。2STのオイルは絶対的存在でこれが無いと絶対走れない。4STオイルならまず無くならないだろう。まあ世には2STが溢れ返っている(草刈機などの農耕機・小型船舶・鬼のような数の50ccスクーターなど)のでしばらくは問題ないのでは。現存する大量の2ST製品が使えなくなった時廃棄される事の方が排ガス規制よりも深刻だ。

YAMAHA RZ50
 ↑排ガス規制で2ST全滅を危惧された中、国産ゼロハンで(2ST全般においても)何とか生き残ったヤマハのRZ50。2STの7.2馬力を思う存分楽しめる。消え行く2STの中で何とか生き残ってくれたゼロハンネーキッドだ。2STでも排ガス規制にクリアーできることを証明してくれた1台だ。RZ50はオフ車のDT50と共通部分が多くあり、DT50がもう少しメジャーで人気があったならば排ガス規制にクリアーして現在も販売された可能性は十分あり得る。


2サイクルエンジン 4サイクルエンジン

例 DTのエンジン(49cc)

例 CBXのエンジン(125cc)
性能項目 評価 性能項目 評価
サイズ・重量 カムなどが無い分小型・軽量化が可能 サイズ・重量 エンジン自体は2STよりも大きくなる
エンジン出力 仕様上ではトルク・馬力ともに4STを上回る。かなりピーキーである。 エンジン出力 2STにはかなわないが、トルク感がある。マイルドな感じ。
燃費 構造上かなり悪い。実質はメーカーの表示している燃費の5割前後くらいになる。50ccでもスクータになるとかなり悪くなるが、ミッション式のDT50はカタログ値リッター80kmで、7.2PSも出しているわりに良い。実際60ccにボアアップしても今までの最高は38kmと2STではよい方。 燃費 かなり良い。カブならメーカー表示でリッター140km!実質その6割以上はキープする。友人であるもっさんの過去のバイクがリトルカブだったがフルスロットルでもリッター60km以上だった。
登坂性能 パワーバンドが普通高回転にあるのでかなり回す必要がある。登坂・向い風はかなり不利。 登坂性能 どの回転においてもスムーズだがパワーバンドでのアタックは2STの方が速い。
メンテ性 エンジン自体初心者でも分解できるほどシンプルだが、2STオイルの欠乏は即刻焼き付きになるので日常の管理は必要。プラグも4STの1/4ぐらいの寿命。またあまり回さないとカーボンが溜まって調子が悪くなる。2STオイルの選出でかなりエンジン特性が変わる。 メンテ性 耐久性は抜群。オイルがなくなってしまっても何とか走るというカブの報告もある。こんなことから多少無精でも大丈夫かな。カムヘッドがある分プラグ交換はプラグレンチがないと行えないし、過去に乗っていたバハでは深い穴になっておりプラグの様子が確認できないのでゴミを吸い出しておかなければ大変。
冷却システム かつて2STも4ST同様に空冷式が多かったがパワー化が進み熱ダレが問題になってきたためスクータは空冷から強制空冷型に移行した。水冷はシリンダー周囲に水路が及ぶため静粛性に貢献する。高出力の2STは水冷でないと、殆ど焼き付く恐れがある。かつてKSRは空冷だったがかなり焼き付くことがあったため、現行モデルは水冷になった。 冷却システム 1回の爆発で2度回るエンジンであるため、2ST程熱ダレはないので殆どが空冷式。今のところ50cc4STに水冷は聞いたことが無い。排気・吸気行程は点火されないので、点火に半サイクルのインターバルがあることになる。
環境への影響 2STオイルは燃料と一緒に燃やされるのでその燃焼オイルが廃棄され非常に汚い。環境に非常に悪いので2STは排ガス規制でほぼ全滅している。 環境への影響 4ST自体はちょっとした触媒やキャブ調整で排ガス規制に乗り切っている。燃費もよいし比較的環境によい。
カスタム性 2STは鋳造によるシリンダーそのものがエンジンであるからあまり期待できない。 カスタム性 カムやタペットなどいじれる個所が多いためカスタム度は高い。
その他 排気管にはチャンバーとよばれる膨らんだエキパイがついておりこれとエンジンとの相性が合わないと本来のパワーを出せない。 その他 キックスタートは独特の反動があり2STよりもかなり重い。2STは手でもスタートできるくらい軽いものがある。
※ 評価は主に50cc単気筒で比較してみました。

 海外仕様のDT
 
ヨーロッパ仕様のDT125              フランス仕様のDT50R
 ヨーロッパでは普通免許で付いてくる原付は125ccまで乗れるため、125ccクラスのラインナップは日本よりもかなり多い上、力も入っている。ただし向こうの自主規制なのか出力は14.1PS(7000rpm)だ。日本仕様は22PSであるのでかなりアンダーパワーに感じる。構成部品自体は日本と同じと思われるのでリミッターが入っているのではないだろうか。他にDT50Rもあったが、日本仕様とは大部分異なり、フロントはディスクブレーキでエンジンも全く異なる。50ccにもタンデムステップが付いているが向こうの法律では50ccでも2ケツが可能だ。いずれもセンスが良すぎるぞ。いいなあ。アンダーパワーでもいいから日本でも販売して欲しいなあ。

記事 2002年7月現在

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